SSブログ

芸術の趣味判断と、味覚(ラーメン/改題加筆) [味覚]

leonardo_da_vinci_last_supper.jpg
晩餐という、食事の絵画ということで、
この絵である。

食べ物と、芸術は、実は深い関係がある。

芸術の趣味判断というのは、
もともとは味覚からきている。
以下の内容は、谷川渥氏の著作からである。

ヨーロッパで、18世紀、
世界に植民地ができて、
多くの新しい食べ物がやってきて、
それを食べる刺激の中で、
貴族の中で、
趣味判断が生まれたという。

それと
この時期に、
毒殺がはやったので、
食べてすぐに毒と判断して吐き出さないと死ぬということがあって、
舌の判断が発達した。

だから、良い趣味をグッドテイスト、
悪い趣味をバットテイストというのは、
この味覚の判断から始まったという起源が
示されているのである。

味覚の趣味判断の発達が芸術の判断に転化したのである。

だから、
私は、味覚というものが、
判断の起源を示す、重要なものであると思う。

さて、
娘とラーメンを食べる。
娘は高校一年である。
「おいしいね」
私は答える。
「《8流》」

ラーメンというのは、だいたいが《8流》である。
《8流》について書こうとすると、
また別にして、単独に書き重ねて行かないといけないほどに、
《8流》というのは、奥が深いのです。

ラーメンがまずいという指摘をグルメ評論家の誰かが言っていて、
私も同感である。
塩が強いし、油が多い。
油は脳内モルヒネを出すので、油で美味く感じさせるというのは下品で、
安易な道である。
そういう悪口を言いながら、ラーメンを食べに行く。

アトリエの近くにはラーメン屋がいくつもあって、
世代交代も激しいが、
私が
良く行っていたのはラーメンショップ 湘南台店。
脱サラのしけた元気の無いおじさんと奥さんがやっている店。

ra-mensyoppu.jpg
ネギラーメンがおいしい。
ザク切りネギで、ネギが生で、スープは関東トンコツと呼ばれるものでの脂っこく下品。
典型的な《8流》のB級グルメである。

こういう味を美味いと思うのは自然なのだが、
しかし、高級な事ではないのである。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

藤沢近くだと、手広交差点に向かって左にあるラーメンビック。
藤沢市川名1-7-24、電話0466-25-3020
ここは《8流》のB級グルメとしては、私の一番好きな店である。

bikku_ra-men_fuji1.jpg


豚骨ベースの醤油味で油こさはありますが淡い甘め系で、鶏油の甘みと生姜の旨みがおいしい。。
麺はストレートで、ここもネギラーメンがおすすめです。
肩ロース叉焼が柔らかく、薄味でおいしい。
おいしいな、と思って食べていても、
格付けをすれば《8流》である。

《8流》という、外食のB級の基本というのは、
自覚していくと、これから脱することが出来る。

溺れていると、
こういうラーメン屋のなかにこそ、
何か、真実があると思えてしまうから、
怖い。

作品を制作して、
自己模倣を繰り返すと、
すぐにこの《8流》に至ります。
《8流》の中に、確かな手応えを感じてしまうのです。
そして自分では、作品を安定して作れていると思えるのですが、
芸術的にはマンネリであることなのです。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

《8流》ではないラーメンというものがあるのか?
それがある。
《1流》のラーメンである。

g5254001.jpg

新橋の、むかしギャラリー手があったビルの1階にあった「支那麺はしご 銀座八丁目店」といお店は、
おいしいのである。
スープは、ラー油やお酢等入った醤油味のピリカラで、
化学調味料はいっさい使わない。
当然すぎる事が守られているおいしさ。

サービスでつくライスを食べながら、ラーメンを食べる。

《1流》のラーメン屋があるということは、
かなりの驚きであった。

場所も新橋とはいえ、銀座8丁目ということもあるし、
当然と言えば、当然かもしれないが、
《8流》に溺れていてはいけないという事を、
知らしめてくれるお店である。

作品制作もそうなのだが、
基本は《1流》である。
《1流》をコンスタントにつくれると、
はじめて実力があると言えるのである。

そのためには、制作の基準というものが必要である。
基準が無いと、《1流》なのか《8流》なのか分からなくなるわけで、
それで言語判定法が開発されたのである。
言語での基準作りである。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

さて、いよいよ、《超1流》のラーメンである。
そんなものがあるのか?

あるのである。

それも、私のアトリエのすぐそばである。

神奈川県藤沢市亀井野2-3-21

豪快というお店。

最初の2001年7月の頃から知っているが、
とにかく、昼の4時間のみ営業で、目立たない立地なのだが、
毎日行列が出来ている。これが毎日で、終わりが無い。
30分の行列は覚悟しなければならないというその味は《超1流》である。

なぜに、こんな僻地においしいラーメンがあるのか?

「東池袋大勝軒」という有名なラーメン屋の山岸一雄の一番弟子の店なのである。
東池袋大勝軒の山岸一雄は、1961年の開店以来一度も弟子を取らずに家族経営してきたという。
しかし1986年に妻・二三子さんが病気で他界し、半年ほど店を閉めていたのだが、
1987年に2人の弟子を迎えて営業再開する。
その2人の弟子の内の一人が独立し、神奈川県六会日大前に「豪快」を開業したのである。

特徴はダシである。
鯖節・煮干し・かつお節が濃厚に利いた蕎麦つゆ風の魚出汁のスープには透明感があり
豚骨・鶏ガラがバランスよく配合されている。
この濃厚な和風のスープが、何と言っても《超1流》。

おすすめはつけ麺です。

豪快.jpg

何人か、アトリエに遊びに来た人を連れて行っているが、
みんなおいしいと言う。

彦坂敏昭君もおいしいと認めたし、
加藤力さんも同意した。

ところがである。
好みというものは奥が深い。

白濱雅也さんは、
この《超1流》のラーメンを、おいしいとは言わない。

それも一理あるのであって、
彼の好みは《超1流》ではなくて、
もっと「なごみ系」が好きなのである。

《超1流》というのは、美術作品でも、
好きではない人が、多くいるのである。
味覚でも、同様であって、好きではない人が居るのである。

基本は《1流》であると言える。










nice!(1)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 1

コメント 3

満腹

つけ麺を、ラーメンの部類に入れることは、邪道のような気がしますが、ラーメンは、あくまでも具やスープとのハーモニーであって、

つけ麺は、どちらかというと、汁主体の、麺は取り付けのような気がします。

そのなかで、超一というのは、どうも、彦坂論からすると、解せないなぁ。

遅くなりましたが、前回のロン・ミュエックの作品に対するご返事講義ありがとうございました。
 わかるような、わからないような、理解しようと悩む自分を至極インテリ的な人間に思えて、ただ優越感に浸りました。

ずぶの素人のために、ありがとうございました。
by 満腹 (2008-06-25 12:29) 

丈

「最後の晩餐」が、ラーメン論につながるとは、愉快ですね。
西洋文学の祖であるホメロスの「オデュッセイア」にも、繰り返し宴会や食事の描写が出てくるのを思い出しました。
主人公が帰宅して、彼の妻を目当てに集まった男どもを掃討する場面もまさに宴会のさなかでした。
by (2008-06-25 21:20) 

MIZUCHI

私は藤沢市民ですが、かつて藤沢にあった七色の味めじろの、らちゃん麺が芸術的だと思いました。
いまでは全く別物になってしまって、もう食べられませんが・・・(涙
by MIZUCHI (2008-06-25 23:29) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。