SSブログ

《こんぴら》から『アートフェア東京2009』へ(自作解説と画像追加) [自作紹介]

IMG_9234-1.jpg
彦坂尚嘉 見立て(トマトと茄子) 金比羅虎丸旅館 2008  写真撮影:高嶋清俊
IMG_9238.jpg
彦坂尚嘉 見立て(トマトと茄子) 金比羅虎丸旅館 2008  写真撮影:高嶋清俊
IMG_9241-1.jpg
彦坂尚嘉 見立て(トマトと茄子) 金比羅虎丸旅館 2008 写真撮影:高嶋清俊

『こんぴらアート2008』から『アートフェア東京2009』へと、
展開するプロジェクトが決まりました。

四国のギャラリーARTEが、
この4月に東京フォーラムで開催される
『アートフェア東京2009』へ出店するのですが、
そこに糸崎公朗と、彦坂尚嘉を出品する事になったのです。

さて、そこで遅れましたが、
『こんぴらアート2008』の総括と報告です。

◆1◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
たのしむ図書館、つくる図書館

琴平プロジェクト
こんぴらアート2008虎丸社中が開幕
by kujitatsuya on 12/12/2008 - 17:54
香川県琴平町で「琴平プロジェクトこんぴらアート2008虎丸社中」が開催されます。
2008年12月12日(金)〜14日(日)。彦坂尚嘉、糸崎公朗はじめ総勢21名の作家が参加。
主催のギャラリーアルテはアートフェア東京にも出展の実力派。
○プロジェクトHP
http://www5a.biglobe.ne.jp/~Arte2000/exhibition/08toramaru.htm

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
DNP Museum Information Japanartscape[アートスケープ] Run by DNP Art Communications

artscapeレビュー 五十嵐太郎(建築評論、建築史家)

2009年01月15日号

琴平プロジェクトこんぴらアート2008・虎丸社中

会期:12月12日~12月14日

老舗旅館「虎丸旅館」及び木造和風建築

「琴平公会堂」[香川県]

美術家の彦坂尚嘉が金比羅で旅館を使った

アートイベントに参加するというので、そ

のトークに出席した。金比羅の上のほうでは鈴木了二の建築や、田窪恭治

の襖絵があるなどハイ・アート的であるのに対し、今回は下のほうで違う

かたちのイベントをやるという。ギャラリー・アルテという四国のギャラ

リーの女性ギャラリストが企画し、とら丸という旅館の各部屋に展示。

宿泊施設をアートの展示に使うのは、東京のアグネスホテル、大阪の堂島

ホテルなどでもあり、ベッドや浴室にアートがあったり、少しずつ間取り

の違う同じフロアの部屋をすべて見たりする機会は、修学旅行でもないと

できない体験。単純にアートがどうこういうより経験として面白い。 

今回はその旅館版。木造和風の旅館で、日本の旅館に典型的な、でたらめ

な増改築がされたプラン。例えば2階に上がるのに四カ所くらい変なとこ

ろに階段がついている。作家のなかにはその特性をうまく使う人と使わ

ない人がいて、彦坂さんは結構うまく使っていた。二つの会場での展示が

あり、客室では天井にナスやトマトのオブジェ。彼の初期の作品はフロ

アー・イベントという床の作品だっただけに、面白い展開。他の作家と

違い、床を占有しておらず、そういう意味だと興行的にもあり得る。

もうひとつ公会堂でやっていたのは、皇居美術館空想の展開。

ちょっとした体育館くらいの広さの空間の真ん中に、存在感のある

皇居美術館の模型が置かれる。またその延長である帝国美術館空想も

一部紹介。隣に糸崎公朗のフォトモの作品があり、壮大でグローバル

な展開の彦坂さんと、ミクロな観察眼で虫や町並みの観察を行なう

糸崎さんの展示が対照的だった。12月14日(日)(五十嵐太郎)

 彦坂尚嘉皇居美術館2.jpg
彦坂尚嘉 皇居美術館と帝国美術館 琴平公民館 2008  写真撮影:高嶋清俊
彦坂尚嘉皇居美術館3.jpg
彦坂尚嘉 皇居美術館と帝国美術館 琴平公民館 2008  写真撮影:高嶋清俊
彦坂尚嘉皇居美術館.jpg
彦坂尚嘉 皇居美術館:建築模型彫刻 琴平公民館 2008  写真撮影:高嶋清俊

琴平プロジェクトこんぴらアート2008・虎丸社中

会期:12月12日~12月14日

虎丸旅館/琴平町公会堂[香川県]

近ごろホテルの客室を使ったアートフェアはよく見か

けるが、旅館の和室を展覧会場にする試みはあまり聞

いたことがない。これは、こんぴらさんで知られる金

刀比羅宮の参道の虎丸旅館と、その近くの重文級の琴

平町公会堂を舞台にした展覧会。出品は彦坂尚嘉、吉

峯和美、糸崎公朗、廣中薫、澤登恭子ら19組。こうした展覧会の場合、ほか

の場所でつくった作品をもってきて展示するだけでは、わざわざ見に行く価

値がない。やはり琴平町という地域性や、旅館の部屋という空間性を生かし

たサイトスペシフィックな制作が望まれるが、そういう作品はごくわずか。

とはいえ、たとえば吉峯の作品は、17世紀オランダを思わせる油絵で和風旅

館とはミスマッチなのだが、意外なことに大きさといい色合いといい図柄と

いい、和室にぴったり合う。一方、天井板にトマトやナスの模型を貼りつけ

た彦坂の作品は、若冲の天井画からヒントを得たのかと思ったら、ぜんぜん

関係ないという。もっとも天井画は金刀比羅ではなく京都のお寺にあるのだ

が。いずれにせよ「今年はパイロット展」というから、次の展開を期待した

い。 12月13日(土)(村田真)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【自作解説】

『見立て(トマトと茄子)』

私自身は、小さい時から病弱で、病気で寝ていて、天井ばかりを見て育ちました。
寝ている場所は、東京の世田谷の三宿の和室の8畳間です。
天井は杉板で、木目の強いもので、こればかりを、飽きずに見て来たのです。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、壁のシミを見つめていると、様々なものが見えると
書いていますが、私も天井の杉の木目の中に、様々な幻視を見て来たのです。

大学生の時には、天井に障子紙に描いた絵巻の作品を、何本もはって見ていました。
もともと平安時代の絵巻物が好きで、絵巻を描いていたのですが、誰にも見せず、
多摩美術大学での学内発表にも出さずに、終わっています。
次に天井を作品にしたのは、1972年に何回目かのフロアイヴェンとという作品の時に、
この杉の天井を、ハンマーで破壊する『シーリングミュージック(天井の音楽)』という
作品をやっています。
このあと1980年代に、東京画廊の山本豊津氏のプロデュースで、
表参道の資生堂のショールームに、かまぼこ型の天井をつくって、
そこに絵を描いています。
彦坂尚嘉 見立て(トマトと茄子)2008.jpg
今回のこんぴらアートでのインスタレーションのきっかけは、
上に掲載したデジタル画像の作品が、もとでした。
これは木目の画像を、水に見立てて、そこにトマトと茄子を浮かべたものです。
エックハルトというドイツ神秘主義の思想家も、木目を見ていると木目になる
と書いています。このエックハルトは、ドイツ語の日常語で初めて聖書をラテン語
から訳した人で、異端審問に摘発されて、著作は焼かれて死んでいます。
私はこのエックハルトに大きな影響を受けていることもあって、木目の作品を
作り続けて来ていますが、このトマトを使う作品は、トマトアートシリーズの
展開です。

何故にトマトなのか?
私は小さな時から、トマトにお砂糖をかけて食べるのが好きだったのです。
そしてトマトの赤い色に、思い入れがありました。お酒のカクテルも、
ブラッディ・メアリー (BLOODY MARY)が好きで、トマトのみそ汁とか、
トマトアイスクリームも作って来ています。
今回も、トマトアイスクリームを、アート作品として作って、売りました。

トマトは茄子科の植物で、和名を赤茄子といいます。それで茄子を連想して、
使っています。
茄子と赤茄子という類似性で、並列しているのです。


際に天井にトマトと茄子を付けて見せようと言うことになったのは、
今回のこんぴらアートの打ち合わせを、梅谷幾代さんと、
電話で何度も話している中から出て来た事です。
彼女とは、金比羅と琴平の歴史のことから、話が始まっています。
軍事都市であったこと、その痕跡は今もたくさん残っている事.。
以下、梅谷幾代さんのメールです。



軍事都市の痕跡は 丸亀はお城の周辺
市役所や裁判所のある一体に兵舎や練兵場があったようです。
乃木神社がありますね。

善通寺は現在も軍都の匂いがします。
乃木記念館は展示室もあって公開されています。
予約制です。
http://murakumotabi.web.fc2.com/c-jm/j-m05-002.html


アルテが移転していた丸亀旧電報局にも本の中で
痕跡が ただ本にある場所は南条町から東へ100mほど
現在の丸亀駅前郵便局のあたりらしいです。
http://blog.livedoor.jp/arte8va/archives/51103189.html

琴平は軍の歓楽地ですね。
私が子供のころ琴平町栄町は川沿いの一段土地が下りた
ところが遊郭街で小学校の友人宅があったので、
遊びにいっていました。
中庭をぐるりと囲んだ同じ大きさの部屋
トイレの数が多くて不思議に思っていました。
大きくなって郭の後だったのだと知りました。
そのころはもうそういった商売はしていませんでしたから
気づきませんでした。
いまにして思うと不思議な風情があったように思います。
現在そこは見事にソープ街になっていてビックリビックリ。

琴平は探せば、まだ痕跡が見つかるかもしれません。
”こんぴらもん”という言葉があるのですが、川から
金比羅山の一体 魑魅魍魎の世界です。

こうしたコミニュケーションの積み重ねから、
トマトと茄子を天井に着ける見立ての作品をやろうという
話になったのです。
梅谷幾代さんも、病気で天井を見て育ったという、
そういう経験の類似性が大きくありました。

五十嵐太郎さんが書いて下さっている様に、
自宅の畳の上にラッテクスという生のゴム液を流してきた作品が、
私の代表作で、今も続いているのですが、
その新たな展開として、天井にトマトと茄子を付ける作品を、
やっていく、その第1回が今回であったのです。

トマトと茄子は、既製品のもので、発砲スチロール性です。
大小の2種類を使っています。
メインの大きな部屋の方は、天井のグリット構造を使っていて、
天井の周辺部にトマトが付けられていて、中心部分は茄子にすることで、
作品に《非-実体性》を与えています。
トマトと茄子は、ベルトサンダーで事前に加工されていて、
水に沈んでいる様に見えるように、削られたものも、
たくさん使われています。

小部屋の天井は、位相線の原理で、対角線を使った非合法曲線状に
取り付けられています。

つまり2種類の方法で、インスタレーションがなされているのです。

縁側の様な板の間の方には、丸石を赤く塗ったトマト石が置かれています。

トマト石を使った,トマト石の石庭を、
2004年にギャラリーHIRAWATA(湘南台)でやっていて、
その写真も展示しました。
トマト石・石庭・裏面.jpg
トマト石・石庭B-3.jpg
石庭(トマト石)拡大完成.jpg

山陽新聞ホームページ

琴平の伝統建築に現代アート展示 

造形や写真約1000点

前衛的な作品を集め開幕した「こんぴらアート」=香川県琴平町の虎丸旅館
前衛的な作品を集め開幕した「こんぴらアート」
=香川県琴平町の虎丸旅館
 

 伝統建築に現代アートの薫り-。香川県琴平町で12日、由緒ある建
造物に前衛的な美術作品を展示する「こんぴらアート2008虎丸社中」
が開幕した。14日まで。
 丸亀市でギャラリーを経営する同町出身の梅谷幾代さんと同町の観光
業者らが、芸術振興と観光客誘致を図ろうと初めて企画。金刀比羅宮参
道にある1912(大正元)年創業の虎丸旅館と、昭和初期建築の町公
会堂(国登録有形文化財)に、県内外の作家21人が絵画や写真、陶芸
など約1000点を出品した。
 虎丸旅館では、天井の木目を川の流れに見立て、トマトとナスの模型
を張りつけた造形作家彦坂尚嘉さん(62)=神奈川県=や、3階の部
屋の壁に空の写真を配置し「金刀比羅宮の石段を登り切った達成感や虚
脱感を表現した」という津山市大吉、写真家杉浦慶太さん(28)の作
品などが並ぶ。同公会堂でも、風景写真を使った巨大ジオラマなどを展
示している。
 入場料1000円で、午前11時から午後6時まで。13、14日は
出品作家らによるシンポジウムもある。(2008年12月13日)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
四国新聞社
旅館客室で芸術作品展/こんぴらアート虎丸社中
2008/12/12 19:03

水面に見立てた天井に
トマトやナスを取り付
けた空間
=琴平町、虎丸旅館

 香川県琴平町内の旅館客室などを芸術作品で演出する「琴平プロジェクトこんぴらアート20
08虎丸社中」(同実行委主催)が12日、同町の老舗旅館・虎丸旅館と町公会堂の2会場で始
まった。県内外から集まった芸術家たちがそれぞれ趣向を凝らし、アートと和風建築の融合した
空間をつくり出している。14日まで。

 同展は、県内随一の観光地・琴平を舞台に、アートによる集客と地域活性化を図る試み。絵画、
陶芸、写真、建築など多彩な分野の現代芸術作家21人が出展した。

 同旅館では、建物の凝った造りを生かし、客室に備え付けの家具なども使いながら空間を演出。
天井に発泡スチロールで作ったトマトやナスを取り付けて水面に浮かんでいるように見せたり、
「家族の秘密」として寄せられた14のエピソードを引き出しなどから探してもらうなど、ユニ
ークな部屋ばかり。来場者は作家との会話を楽しみながらじっくりと鑑賞していた。

作品展示のほか、ワークショップや講演会、コンサートなどの関連イベントも開く。
入場料1000円(会期中共通)。問い合わせは同旅館〈0877(75)2161〉。

 
倉敷芸術科学大学芸術学部

琴平プロジェクトこんぴらアート2008・虎丸社中

Saturday, December 27, 2008

12月の頭に『琴平プロジェクトこんぴらアート2008・虎丸社中』を観にいってきた。香川県琴平町の金刀比羅宮参拝みちの石段92段目に位置する老舗旅館「虎丸旅館」と木造和風建築「琴平公会堂」が展示会場である。

老舗旅館「虎丸旅館」は、急斜面に建っている迷路のような旅館だ。その旅館の各部屋に、それぞれ美術家たちが「アート作品のある部屋」を作り出している。そして旅館の地図を片手に作品のある部屋を探し鑑賞する。倉芸の非常勤講師真部先生も展示に参加されており、ゆりの間でパフォーマンスをされていた。

 初めは、旅館の展示と聞いて「アートで町おこし」という言葉が頭に浮かんでいた。しかし、そのようなあやふやな展示ではなく、しっかりと、旅館という日常的な場所を生かした展示であった。また今回のような日常的な空間での展示は、ギャラリーや美術館などといった特別な場所での展示と比べ、肩の力を抜いて見ることが出来て楽しめた。撮影もできたし。

 特に記憶に残っているのは、蔵本秀彦さん、あざみの間のマリアーネさん、富士の間 彦坂尚嘉さん「見立て、茄子と赤茄子(トマト)」の作品である。

川の間の作品は、畳の上に平面作品が平置きにされていた。その作品は、鉄粉を支持体に付着させて制作しているそうだ。そして鉄粉を酸化させたり、あるいは酸化を止めたりして色を調節する。酸化の過程で赤みを帯びた鉄粉は様々な色に変化していた。

  さて琴平プロジェクト次回は来年九月()らしい。たのしみです。

彦坂尚嘉皇居美術館琴平4.jpg
彦坂尚嘉/皇居美術館建築模型彫刻、2008、琴平公民館      撮影:糸崎公朗 
彦坂尚嘉皇居美術館琴平3.jpg
彦坂尚嘉/皇居美術館建築模型彫刻、2008、琴平公民館      撮影:糸崎公朗 
彦坂尚嘉皇居美術館琴平1.jpg
彦坂尚嘉/皇居美術館建築模型彫刻、2008、琴平公民館      撮影:糸崎公朗 
彦坂尚嘉皇居美術館琴平2.jpg
彦坂尚嘉/皇居美術館建築模型彫刻、2008、琴平公民館      撮影:糸崎公朗 
彦坂尚嘉皇居美術館琴平5.jpg
彦坂尚嘉/皇居美術館建築模型彫刻、2008、琴平公民館      撮影:糸崎公朗 

琴平案内状31.jpg

【自作解説】
日本皇居美術館と、アメリカ帝国美術館

天皇に京都に帰ってもらって、皇居を巨大美術館にしようという作品は
いろいろな性格をもった複雑系の作品です。背景には日本の戦後という
時代を終わらせたい。その敗戦ボケした自己憐憫の沼から、日本人を脱
出させたいというモーゼ的な妄想性の作品という面もあるし、
そしてまた、芸術憲法を成立させて、日本の新憲法の中に芸術立国とい
う理念を打ち立てようという、これもまた吉田松陰的な妄想政治的な
作品という面もあります。

しかし美術家としては、実は日本美術史と、世界美術史を、個人的な感
性で捉え直すという、そういう芸術家としての野望の作品なのです。
それは村松 梢風の『本朝画人伝』(全7巻) と、ジョルジョ・ヴァザー
リの画家・彫刻家・建築家列伝』を読んで抱いた妄想の結果の作品な
のです。つまり《超1流》の作品を日本美術史と、世界美術史のなかか
ら選んで、彦坂尚嘉という独りの日本人美術家が、何を良い作品として
考えたかを作品にするという、そういう作品鑑賞の教養講座的な作品な
のです。

それは同時に、巨大建築を建てるという現代建築の巨大化、バブル化へ
のパロディ的な妄想作品です。皇居美術館は高さが1kmの大きさであり、
そしてマンハッタンに建設しようとする全人類美術館は、高さ1万メート
ルという、人類史上最大最高の建築妄想なのです。しかし作品論的には、
それは《建築模型彫刻》というものなのです。

先日3度目のイタリア旅行で、ルネサンス建築家のアンドレーア・パッラ
ーディオをたくさん見て回りましたが、建築には、彫刻が付属的に着いてい
るものなのです。この建築の装飾としての彫刻が、次第に自立してドナテロの
彫刻や、ミケランジェロの彫刻になり、ロダン彫刻に至る台座彫刻となるの
です。これがさらに台座を捨てて、ついにはアースワークにいたったという
のがロザリンド・クラウスの『オリジナリティと反復』の現代彫刻論でした。
その限界に達した彫刻を、蛇が自らのシッポを飲み込む様に、再度建築への
回帰させて、建築模型としての彫刻という、つまり建築の付属として始まっ
た彫刻の歴史を、裏返して、建築模型としての彫刻と言う、建築を飲み込ん
だ彫刻を構想するという、そういう妄想的な彫刻史作品なのです。であるが
ゆえに巨大建築化して行くのです。

というわけで、彦坂尚嘉の作品は、美術の好きな病弱少年の、芸術お宅的な
妄想作品と言えます。人生は夢幻と歌ったのは織田信長でしたが、彦坂尚嘉
の美術作品もまた、美術芸術史と向き合う夢幻作品なのであります。





nice!(2)  コメント(3)  トラックバック(1) 
共通テーマ:アート

nice! 2

コメント 3

糸崎

アートフェアで彦坂さんと同じブースで出品することは、ぼくもさっきギャラリーから聞いたばかりですが、よろしくお願いします。
ぼくと彦坂さんは、真逆でありながら共通する要素を持つ関係ではないかと思いますが、そういう意味での「対比」がうまく表現できると面白いかもしれません。
で、以下の五十嵐さんの「こんぴらアート」へのコメントですが、

>隣に糸崎公朗のフォトモの作品があり、壮大でグローバルな展開の彦坂さんと、ミクロな観察眼で虫や町並みの観察を行なう糸崎さんの展示が対照的だった。12月14日(日)(五十嵐太郎)

ぼくの認識では、彦坂さんも非常にミクロな視点で《芸術》の観察を行なっており、それが《41次元アート》という壮大でグローバルな展開へと、結び付いているのだと思います。
対してぼく自身は、ミクロな視点での虫や町並みの観察が、《非人称芸術》という壮大でグローバルな展開へと結び付いている・・・ハズなのですが、どうも「こんぴらアート」では壮大でグローバルであるところの《非人称芸術》が表現できてませんでした。
そう考えると、彦坂さんの「皇居美術館」は、非常に上手い作品だなと、思うわけです。
「皇居美術館」という作品には、彦坂さんの《41次元アート》という思想が象徴されており、その意味で非常に分かりやすいのです。
あらためて考えると建築というものには、その時代の支配的な思想や価値観を象徴する、という機能があります。
その意味で、自身の壮大でグローバルなコンセプトを建築で象徴する、というのは実に見事なやり方ではないかと思うのです。

ただそうは言っても、《非人称芸術》のコンセプトを「壮大な建築」で表現することは理論矛盾があります(笑)
それに、彦坂さん以外のアーティストが「象徴としての建築」を構想したとしても、それこそ二番煎でしかありません。
だからぼくは、自分自身のやり方を模索するしかないのですが、なかなか難しいですね。
難しいというのは、象徴という以前に、自分自身のコンセプトがまだちゃんと構築し切れていない、ということです。
《非人称芸術》は、アートに対するオルターナティブなパラダイムの提示なのですが、こういう「大風呂敷」はともすれば簡単に「トンデモ理論」になってしまいます。
大風呂敷がトンデモ理論にならないためには、それだけの学問的な「実力」を身に付けることが必要なのだと思います。
その意味で、ぼくは彦坂さんよりだいぶ「遅れを取っている」という感じで、頑張らないといけません(笑)

つまり、ぼくと彦坂さんは「大風呂敷」というところで共通項があるのだと思うのですが、こういうのは今の時代には流行らないともいえます。
というのも、現代は「大きな物語」が崩壊し、そして「小さすぎる物語」が乱立する時代だからです。
最近、諏訪哲二さんや内田樹さんの教育問題の本を読んでそう思ったのですが、最近の若者(1965年生まれ前後、つまりぼくの世代です)は、「自分の感じたことを大切にする」ということだそうです。
それは恐らく、彦坂さんの《6次元・自然領域》ということと関係してるのではないかと思います。
「自分の感じたこと」とはつまり「小さな物語」なのですが、やはりそれは「小さすぎ」なのであり、そればかりになるとアート全体が弱体化してしまう・・・ということを彦坂さんは指摘されているのではないか、とぼくは解釈してます。
アートが一枚岩の「大きな物語」を目指すことは無意味だとしても、しかし「程よい大きさの物語」の構築はこれからの時代には必要なのかもしれません。
その意味で、次回のアートフェアの展示が、その先駆けになったとしたら、面白いんじゃないかと思います。
by 糸崎 (2009-01-20 15:35) 

symplexus

システィーナ礼拝堂天井画のように
天井は見上げるという動作が必要なことから
宗教施設では特殊な空間を占めてきたように思います.
立体的な装飾については,構造物の各所に寓意をこめて
いろいろな試みが東西を問わず行われて来たと理解しています,
今回ナスやトマトという世俗的(?w)立体を配したのは
何か挑戦的な意味合いが有ったのでしょうか?
(ちょっと深読みですね).

それにしても皇居美術館は異様な迫力です.
モデルで良かったと内心ほっとしているぐらいです.
悪魔的な異型が根源的暴力を掘り起こすと言うのか.
ぜひいつか身近でこの作品を拝見させて下さい.
by symplexus (2009-01-20 16:07) 

ヒコ

糸崎公朗様
コメントありがとうございます。いま、建築ラジオの中に、美術ラジオを付属させようという構想が進んでいて、国立近代美術館で開催されるコラージュ展を見て、20分のラジオ番組を作ろうとしています。それに糸崎さんと、南泰裕さんの参加をお願いできないかと思っています。お二人ともブリコラージュを方法となさっているからです。いかがななものでしょうか。
メールか電話をくださいませんでしょうか。
hiko@ja2.so-net.ne.jp
090-1040-1445
by ヒコ (2009-01-21 03:00) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。