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若手作家(6)池田学の《第41次元》イラスト画[訂正1加筆5改題最後の部分に木村恒久を加える] [アート論]

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  • 池田学 存在 2004 紙にペン、インク 145x205cm
池田学の巨大細密画の世界です。
紙にペンで1年くらいをかけて描いている。
下の画像は、上の木の細部です。
素朴に驚くべき絵であって、引きつけられます。
ミクロの世界とマクロの世界が、入れ子の様に入り込んだ、
複雑系の宇宙論とも言うべきイラスト画です。

私たちが生きている訳の分からない社会と言うのは
こうした様相なのかもしれないと思います。

これをイラスト画と言って良いのか?
《真性の芸術》絵画ではないのか?
という批判はあると思いますが、
一つは社会的にイラストと呼ばれているのであ、
私の偏見ではありません。
ウィキペディアに「池田学(イラストレーター)」とあります。 
http://ja.wikipedia.org/wiki/池田学_(イラストレーター)

もう一つ学歴上の問題があります。
東京藝術大学美術学部デザイン科卒業後、
2000年東京藝術大学大学院修士課程修了とあります。
デザイン科を卒業しているのです。

最後の理由は、後で述べる様に、
彦坂尚嘉の《言語判定法》でもデザイン的エンターテイメントで
あると、判断されるからです。
素晴らしいと思いますが、面白過ぎるし、
芸術というよりは、
良く出来た力作のエンターテイメント絵画なのです。

さて、次の数枚の画像は、上の『存在』という作品のディテールです。
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中国ぽいですね。

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さて、次の画像は
事実上のデビュー作である『再生』です
2001年、「再生」が第4回はままつ全国絵画公募展大賞ならびに佐賀銀行
文化財団新人賞を受賞したのです。 これを機に海外の美術館(ドイツ、
ナダ、ハワイなど)からコレクションに加えたいとラブコールがされた
そうです。 

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このディテールにこだわった超細密画が特徴なわけですが、同時に
近代を代表する軍艦が、自然の中で朽ち果てて行くという主題が、
この2001年という、21世紀の開始という言う時代の
象徴として、機能しているわけです。

1991年の21世紀の開始によるグローバリゼーション時代への移行を
象徴する美術作品としては柳幸典のアリンコの万国旗の作品が
ありました:
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《想像界》の眼で《第6次元》のデザイン的エンターテイメント
《象徴界》の眼で《第6次元》のデザイン的エンターテイメント
《現実界》の眼で《第6次元》のデザイン的エンターテイメント

《現実界》の作品、気体美術。

《気晴らしアート》《ローアート》
シニフィアン(記号表現)の美術。
《原始立体》『かざりもの』【B級美術】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
大変にビックヒットして、世界中の美術雑誌の表紙になった作品ですが、
今、改めて見ると、色あせて見えますね。
この辺が《第6次元》の作品のもろいところなのです。

あれとともに、
池田学の作品は、美術史に残る、
時代を象徴するモニュメンタルな作品と言えます。
東京都現代美術館や国立近代美術館で20世紀日本美術展が開催されま
したが、この作品は展示されるべきものと言えます。

池田学プロフィール

1973年 佐賀県生まれ
1998年 東京藝術大学美術学部デザイン科卒業
    卒業制作 デザイン賞
    平山郁夫奨学金賞
    次代への表現展 vol.6 (おぶせミュージアム)
1999年 グループ展 (麻布アートサンサシヨン)
    次代への表現展 vol.7 (おぶせミュージアム)
2000年 東京藝術大学大学院修士課程修了
    タイ取材旅行
2001年 個展 (銀座スルガ台画廊)
    第4回はままつ全国絵画公募展 大賞
    佐賀銀行文化財団 新人賞

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2002年 グループ展 (長谷川空間創造会社)
    中国、東南アジア取材旅行
2004
 個展 新生堂 /東京
「こたつ派2」 ミヅマアートギャラリー /東京
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池田学の志向の中には、アルチンボルド的なものがあるのですね。
アルチンボルドを見てみましょう。

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《想像界》の眼で《第6次元》のデザイン的エンターテイメント
《象徴界》の眼で《第6次元》のデザイン的エンターテイメント
《現実界》の眼で《第6次元》のデザイン的エンターテイメント

《想像界》の作品、固体美術。

《気晴らしアート》《ローアート》
シニフィアン(記号表現)の美術。
《原始平面》『ペンキ絵』【B級美術】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
こうみると、池田学はアルチンボルドに似ていますね。
寄せ集めですから、原理的にはおなじところがあります。

池田アルチン.jpg

2005
「Since 1994- ミヅマアートギャラリー10周年記念展」 ミヅマアートギャラリー /東京
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2006
 個展 「景色」 ミヅマ・アクション /東京
「Alllooksame. ArtChinaKoreaJapannext」 The Fondazione Sandretto Re Rebaudengo /トリノ

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2007
「Thermocline of Art - New Asian Waves」 ZKM /カールスルーエ
「第10回 岡本太郎現代芸術賞展」 川崎市岡本太郎美術館 /神奈川
2008
 個展 ミヅマアートギャラリー /東京
「ネオテニー・ジャパン -高橋コレクション」霧島アートの森、鹿児島
 巡回:札幌芸術の森美術館、北海道
「ORDER RECEIVED」ミヅマアートギャラリー、東京
「Great New Wave: Contemporary Art from Japan」Art Gallery of Hamilton、ハミルトン
「Re-Imagining Asia」、The House of World Cultures、ベルリン
「もうひとつの風景:森アートコレクションより」森美術館、東京
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中国の象牙を彫った工芸=アイヴォリー・カービングというものがあって、
こうした池田学の細密の膨大な世界を見ていると、
それを思い出します。

次の画像はアイボリー・カーヴィングです。
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これは象牙の形がそのままでしたが、
もっと大きいものがあります。

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こうしたアイボリー・カーヴィングの彫刻は、日本にも入って来ています
が、何と言っても中国です。
中国人は、こうした気の遠くなる様な細かい、しかも膨大な規模の工芸を
作って来ています。
米に彫刻する様な細かい物が、中国や台湾に行くとたくさんあるのです。

池田学のイラスト画には、こうした影響があるのでしょうか?
似ています。

池田象牙.jpg

【下記をクリックしてください】
池田学の経歴を見ると、次のようにあります。

2000年 東京藝術大学大学院修士課程修了
    タイ取材旅行

2002年 グループ展 (長谷川空間創造会社)
    中国、東南アジア取材旅行

最初にタイに行っているので、
タイの美術に何か関連があるのかもしれません。

タイの画像を並べて見ます。
池田学が、タイに行って何を取材したのか、空想してみて下さい。
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Thai Bread (10).jpg
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Thailand wooden art.jpg

さて、いよいよ最後に池田学の作品の芸術分析です。

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《想像界》の眼で《第41次元》のデザイン的エンターテイメント
《象徴界》の眼で《第41次元》のデザイン的エンターテイメント
《現実界》の眼で《第41次元》のデザイン的エンターテイメント

《現実界》の作品、気体美術。

《気晴らしアート》《ローアート》
シニフィエ(記号内容)の美術。

実体的美術。

《透視画面》『オプティカル・イリュージョン』【A級美術】

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

《真性の芸術》ではありませんでしたが、
しかし《第41次元》の凄さを体現している美術作品と言えます。

それは《現実界》の美術で、しかも実体的です。
だからこそ、刺激もあり、
エンターテイメントとして充実しているのです。

《ローアート》でありながら、【A級美術】であるというのは、
矛盾しているようでありながら、
こういう例もあるのです。
音楽では、簡単にいくつも実例をあげられます。
たとえば、2000年デビューのリンキン・パークも、
池田学の絵に似ていて、幅広いジャンルの音楽要素を取り入れており、
オルタナティブ・ミュージックの独自の複雑さをもっていて、
これが《ローミュージック》でありながら【A級音楽】です。

《現実界》の実体的な美術でありながら、
シニフィエの美術であると言うのも、考えさせられます。
つまり、池田学のイラストは、バーチャルリアリティの美術なのです。
手描きというローテクを駆使していますが、CG時代の架空画像なのです。


エルネスト・ネトは、《現実界》ではありますが、
《非-実体性》があって、シニフィアン(記号表現)の美術で、
池田学とは、違います。あれはバーチャルリアリティではないのです。
池田学のは、デジタル時代のバーチャルイメージを、ローテクの手描き
で描いているのです。
もしもこれがCGで作られていたら、人々は感動しないでしょう。
CGで作るはずのものを、手描きで描いているから、その手法の骨董性
もあって、人を引きつけるのです。
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バーチャル・イメージを、アナログのコラージュで極限まで展開した
デザイナーに木村恒久さんがいます。
昨年、肺癌で死去された。享年80歳。ご冥福をお祈り致します。
実は私の本も、木村恒久氏のデザインであった。

反覆・新興芸術の位相72*.jpg
裏も載せないといけないのだが、
デモ隊が、旗をもって行進しているというもの。

このデザインは、テートモダンに私が出品した時に、受けて、
「センチュリーシティ」という、テートモダン最初の企画展だったのだが、
そのポスターや、宣伝に使われた。
木村恒久さんの、デザインの威力と言う物を、改めて感じさせられた
のであった。

しかし、今、池田学のバーチャルイメージと、木村恒久のそれとを比較
すると、空間概念そのものの、変更に気がつかされる。

池田学の空間は、入れ子構造に何重にも入り込んで行くフラクタル系の
複雑な宇宙空間なのです。
それに対して、木村恒久の空間は、デカルトの延長概念の空間で、
空間そのものが均質に広がって無限につながっている。そういう近代の
空間の中のバーチャルイメージなのです。

しかも木村のイメージは、シニフィアン(記号表現)であって、
池田のシニフィエ(記号内容)のイメージとは、
一線を画しているのです。
この両者の間には、ですから近代の終焉と、
情報化社会=デジタル世界への展開との、その両者の断絶がある。


もっともシニフィエの美術であるというのは脳内リアリティがそのまま
出ているような美術ですから、紙にペンで書き込んで行くという池田学
の方法故のもので、その辺は奈良美智のシニフィエのドローイングと同
じ構造なのです。

奈良美智は、それが《想像界》の美術であるのに対して、
池田学は、《現実界》のドローイングになっているのですが、
しかし二人ともシニフィエ(記号内容)の美術として同じであり、
今日の情報化社会的なドローイングなのです。
先日の東京国立近代美術館のエモーショナルドローイング展に出ても
良い作品であったのです。

逆に言えば、ドローイングでは描けても、
油彩でリアルに描き込んで見せると言う事は、
多分出来ないでしょう。
油彩で描き込むとシニフィアン(記号表現)の美術になってしまって、
それではこうしたバーチャルな妄想の増殖が出来ないのです。
ドローイングという手法が、実はデジタル時代の有効な方法である
事が、池田学によって証明されているのです。



タグ:池田学
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