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奈良・草間の価格グラフ/近代国家の破綻(改題2加筆2) [歴史/状況論]

情報を見ていると、そろそろ底を打って来て、
この金融危機も、なんとか乗り切るのかなァ、という印象はあって、
この程度だと、変動としては小さくて、
もう少し大きく崩れて欲しいという、不穏当な考えも少しあったのです。

どうせなら、もう少し大きく変化して欲しいですからね。

ところが、底打ちというのは、
どうもプロは考えていないらしくて、
日経ビジネスを買うと、暗い話のオンパレードでした。

しかし、これはジャーナリズムの故のものであって、
そのまま、信じる必要はありません。


cover_20090323.jpg
世界経済の猛烈な悪化が止まらない。もはや急激な収縮をどう防ぐかではなく、それをどう止め、被害を最小限にするかだ。巨額に積み上がった負債を処理し、新しい需要を創出していく手立ては何か。そのためには実態を正確に捉えることが必要だ。


私自身は、今回の崩壊は世界恐慌だと思って来ていて、
このブログでも何回か「恐慌」という言葉を使っています。

しかしマスコミは、「世界金融危機」という言葉に、
止めていたのですが、
ここに来て、日経ビジネスは、恐慌を全面に出して来て、
かなりセンセーショナルにあおって書いています。

日本の経済の悪化は、世界の中でも異様に悪いのです。
それにヨーロッパが悪い。
事態は、かなり本質的な規模の変動になって来ています。

日経ビジネスは、読み物としては面白くて、買い得でした。
久しぶりに楽しんだのですが、しかし暗いのです。
読後、かなり気がめいりました。
立ち直れないくらい(笑)。

東欧が悪化していて、ヨーロッパのいくつかの国家が、
破綻しそうな情勢らしいです。
国家破綻だと言うのです。
同じことは、ニューズウイークも書いています。

しかし報道と現実は違うのです。
ソヴィエトの崩壊の時もそうですし、
ブラジルの経済破綻の報道も、事実を正確に伝えるものでは
ありませんでした。

ですから正確には事実は分かりませんが、
しかし「国家破綻」という言葉は、禍々しさがあります。

今までも、歴史的には国家は破綻してきているのです。
東ドイツは破綻したのだし、プエルトリコも破綻しています。
日本の敗戦も破綻です。
明治維新というのは、江戸幕府の破綻です。

しかし今起きているのは、
そういう規模ではなくて、近代の国民国家というシステムの
破綻です。世界中の破綻かもしれません。

近代国家の終焉については、1980年代からフランスの哲学者など
が書き出していて、私も1冊本を買って、新美術新聞にコラムで
書いたことがあります。

私自身は、学生時代から国家の滅亡の問題には興味があって、
実際に近代の国民国家は、壊れて来ているのですが、
今回の世界恐慌は、この面を、さらに深刻化して来ています。

私は1973年の石油ショック、1990年代の失われて10年、
そして今回の世界大恐慌と、3回体験して来ていますが、
今回の規模はほんとに大きい。


考えてみれば日本の経済も政治も、
実は破綻していて、国家破綻寸前なのです。
麻生政権というのは、日本国家の破綻の象徴とも言うべき政権です。

アメリカ合衆国だけが沈んでいいたり、破綻しているのではなくて、
近代の国民国家というシステム自体が、正味期限が切れて、
崩壊を続けているのです。
そのことは認めた方が良いのだろうと思います。
そのことは、むしろ喜ぶべきと思います。


教育にしても、人口の減少にしても、
ゴミの問題も、財政赤字の増大もそうですが、
深刻な危機状態を続けているのです。

しかし、そういう崩壊の中でも人間は、
ふてぶてしく生きて行くのです。
ふてぶてしく生きるのは、面白いのです。

「国家なんか知らないよ」という人々が増えて来ているのです。
良い事ではないでしょうか。
自力で、自分の才覚で生きる。

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人々の、ふてぶてしさが、未来を切り開きます。
ネグリ/ハートの言う、マルティチュードです。
日本語で言えば「うぞうむぞう」。

日経新聞を読んでいても、
高度消費社会がピークを越えて、
今は、節約と、抑制の時代に入って来ている記事が多くあります。

友人の言を書くと、
基本は石油であったのです。
石油の浪費の中で、高度消費社会が暴走して来た。
そして石油が枯渇して来て、
この消費社会の暴走にブレーキがかかって来た。
節約社会が、始まりそうです。

以前にネットの写真情報で、
ニューヨーカーが、ホームレスでもないのに、
ゴミをあさっている写真があって、
高度消費社会への抵抗運動が始まっているとの報道でした。

資本主義そのものの終焉については、
まったく私は考えてこなかったのですが、
確かに、そういう事を考えることが必要な事態になって来ています。

これも初めての体験です。

自動車の販売台数の減少が、
単なる不景気故のものではなくて、
自動車を持つ事自体に、若い人の欲望をそそるものが
無くなって来ている。

自分の分にあった、質素な生活を生きて行こうとする人たちが、
時代の主流を作り出しているのかも、しれません。

家庭菜園や、農業への回帰も含めて、
自給自足の復活が必要です。

美術作品も、転売目的の買い方ではなくて、
自分で長期間持っているものを買うという時代に移りつつあります。
高品質で、安いものが売れて行く時代になって来ているのです。

低価格の芸術作品を、良しとする事が重要です。

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奈良美智さんのオークションでの
作品の販売実績のグラフを見つけました。

IMG_0008.jpg

出典は2007年秋号の『アートコレクターズ』の
「日本にアートバブル到来か?」という記事です。
こういう雑誌も、下品で不愉快で、買って来ていないので、
見るのが、遅れました。

歴史化してから見ると言う、歴史家的な遅れですね(笑)。

現在の世界恐慌を生み出した直接の原因は、一応分かっています。

2001年にアメリカのITバブルがはじけて、不況になりました。
この対策で、金利が緩められて、サブプライムローンもはじまって、
借金による過剰消費の時代になるのです。
株価は高くなって行きましたが、
根拠なき高騰だったのです。

それが2007年の9月くらいまで、続きます。
10月、11月から急激に崩れ始めます。

このアメリカの過剰消費と、
日本の円安が重なって、日本全体の景気が良くなるばかりか、
日本の美術市場が活性化したのです。

この経済の時代区分と、まったく符合する形で、奈良美智の売り上げが
上がっているのです。
しかしこの奈良美智の高騰も、芸術的根拠の無いものだったのです。

現在奈良さんの価格は約1/5に落ちています。


草間弥生の場合は、もっと極端です。

草間弥生の価格.jpg

草間のニューヨーク近代美術館での回顧展があったのが1998年で、
この年、売り上げが上がっているのが見えますが、
それでもその後下降していて、草間の作品は悪いこともあって、
市場的にも上昇しなかったのです。

草間の作品は、決して芸術的に高度ではありません。
だから価格的には低迷して来ていたのです。

それが2004年に上向きに跳ね上がり、
2005年、2006年と異常に突如として増加します。
この草間の高騰も、芸術的根拠の無いものでした。

芸術性と美術品の価格は、連動していないのです。
悪い作品こそが、無知無能の多数者に喜ばれて、
馬鹿な高騰をするのです。
そして誰かが儲けて、多くの人々が損をする。
芸術という名において行われる詐欺や、博打です。
美術市場は、賭博場なのです。

そして人間は、博打と、戦争と、猥褻が好きなのです。

そして2007年10月頃にピークになり崩れます。

このグラフからも分かる事は、
そもそもの原因は、アメリカのサブプライムローンを中心とした、
借金に走った過剰消費のお金が、流れ込んで来ていたのであって、
作品そのものの価値とは、別の原因が大きくあったのです。

美術品の高騰は、芸術的な根拠の無いものであったのです。

草間も億を超えていますしたが、
現在は1/5以下になっています。

1億で買ったものが、2000万円を割って、
8000万円が消えているのです。
芸術的根拠が無いゆえに、価格は崩壊したのです。
博打の時代の、崩壊です。

なぜに、こうした買い物に走るのか?

これは理性的な行動ではないのです。
人間は、そもそも理性的には生きていないのです。
愚かな、衝動で、無知無能に生きているのです。
博打と、戦争と、泥棒と、強姦が好きな動物なのです。
野獣的盲目性の支配するアートカジノの時代であったのです。

そして破綻し、多くの人が損失の中で、泣き寝入りをします。
売らずに、そのまま持っているのです。
こういう事を繰り返して、
私は3回見て来たのです。

美術界は、カジノなのです。

人間というのは愚かなのです。
私の知人も、一番高い草間を買っています。
なかなか賢明で、川久保玲の好きな人なのですが、
人間なのですね。
人間そのものが、愚かなのです。
彼だけが愚かなのではないのです。

これは蕩尽と言えます。
昔で言えば、吉原で芸者をあげて、
小判の金貨を撒いて遊んでいる様なものです。

そういう遊びがしたいのです。

中国人アーティストのオークション価格の数字も見つけました。
凄いものです。

以下の数字は、1点の作品のオークションでの落札価格です。
出典は『アートコレクター』2008年No.6

蔡國強 約10億6,550万円

岳敏君 約6億6,986万円

曾梵志 約6億2,892万円

張暁剛 約5億5,503万円

王●義  約4億6.327万円

方力釣 約4億5.495万円

劉小東 約3億1,265万円

劉 野 約1億5,470万円

周春芽 約1億0856万円

洪 浩 約1億0475万円

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こうした価格が、作品の芸術的な価値によってではなくて、
アメリカのサブプライムローンに象徴される安易な借金による、
過剰消費の結果として生み出されたと言うことなのです。

そして崩壊し、
世界恐慌へと、至ったのです。
この結果は6年後に、ほぼ輪郭が見えると思います。

しかし不幸な事です。
自分の1点の作品が10億で売買されて、売れしいですか?

そんな事をしていて、
作家として成長して行けるはずがありません。

適正価格を求めるにしろ、
過剰な作品の高騰は、退廃を生むだけです。

芸術家に必要なのは、適正な価格だけです。

そして不当に安い価格でも、
作品をしっかりと作り、誠実に芸術を追求し、
安売りでも、売る。

安売りに耐えても、作り続け、考え続けて行く事。

6年後に、何人かが死ぬでしょうが、
そのときに、新しい時代は始まっているでしょう。

私に新しい時代を見るだけの命が残されているかは、
分かりませんが、
それでも針の穴の様な狭き門を入るのです。
必ず、《真性の芸術》は生き残ると信じて。











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じゃむ

草間さんも奈良さんも両方、グッズなども売られているし、景気は良い作家さんでしょう。
日本でも海外でも売れていらっしゃる作家さんの有名どころですね。(^^
by じゃむ (2009-04-05 08:35) 

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