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批評について(3)/初心に帰れ [アート論]

1

今日は白濱雅也さんの最初期の大きな立体を見せてもらった。
ピカソとか岡本太郎、ムーアといった影響の見える作品なのだ.
今のキャラクターものではなくて、半抽象の作品で、複雑で、多くの要素がある。

《想像界》の眼で《1流》
《象徴界》の眼で《6流》
《現実界》の眼で《6流》で、
何よりも《想像界》の領域で、真性の芸術になっている。

《想像界》《象徴界》《現実界》の3界ですべて真性の芸術であらねばならないという大芸術への志向は、もっともであるとしても、現実には3界はバラバラの分解の時代になっている以上、《想像界》だけの芸術でも良いと言う主張はあるのと思うのである。

私自身は《超1流》の作品が好きだが、白濱雅也さんは、《1流》の作品を愛しているものが多くて、代表的なのはリキテンシュタインが好きな事である。それはそれで正統な事であって、したがって《1流》の《想像界》の真性の芸術がつくれるのならば、それはアーティストとして成立していると、主張の出来る事である。

2

今日見せてもらった、この最初期の作品は、白濱さんの回りの人にも愛されて来た作品であって、ここにこそ、原点と言ったものがある。

これで良いのであって、今までも多くの作品を見せてもらって来たが、その中には《1流》作品としてうまくいっているものと、今回のマキイマサルファインアーツのように欲張ってチャレンジして、見る方を困らせる作品とが、入り交じっているのである。

《想像界》だけを主軸にして生きている人は、10人中6人くらいの多くの人々で、白濱さんもその1人だと思う。《想像界》というのは、不安定な世界であるのである。安定性というのは、どうしても《象徴界》であるし、最近の《現実界》だけの人を見ていると、独特にブレないと言うか、安定性を示している様に見える。しかし《想像界》の不安定性をそのままに生きて、製作して行くので良いのではないだろうか。

今までの佳作を集めて、ポトフォーリオを作る必要があるのではないだろうか。自分の一番良い作品を集めて眼で覚えて、安定させる必要があるのである。一つは《1流》の作品だけを、最低でも代表作7点を集める。もう一つ《41流》の作品を同じく7点集めて、作品集を作ってみるのである。


3

ただ白濱雅也さんは、今まで、この今日見せててもらった作品を自分の原点であるとは思っていなかったとのことである。そういう初心の喪失があるのである。人間は初心を忘れるものなのである。しかしすべて意味は初心にこそある。


作品的にも、重要なのは初期の未熟な作品である。ここにこそ、作家の原点があって、これを忘れてはいけないのである。人間は初心を忘れるものであって、それが多くの問題を生んで行く。「初心に帰れ」というのが、極めて重要な教えなのである。

谷川雁の詩集に『原点が存在する』というのがあって、私は大きな影響を受けている。私自身はだから、初めにこそすべてがあると思っている。作家の作品を見て行く場合にも、初期作品を可能な限り遡行させて見て行くのである。自分の作品展開も、幼児期まで遡行する中で考えるのである。

私の場合は、医者になろうとしてなり損なっているのだが、私は今でも医者であろうとしている。医者になろうとしていた自分自身に回帰しようとするのである。人間存在は病んでいるものであり、そして社会もまた病んでいる。この病と向き合い、病を治そうとする行為として、作品を構想するのである。

4

白濱雅也さんの初期を見て行くと、2つの問題にぶつかる。一つは多摩美術大学を卒業して、彼はラウンドスケープをめざして、造園の会社に就職しているのである。私は、このラウンドスケープの仕事や、造園作品こそが、白濱雅也さんの正統な仕事であると思う。今からでもこの環境的な作品に回帰して、まず、ラウンドスケープ的な環境を作成する作品を制作すべきであると思う。この環境の中に、立体作品を配置して行くと言う、総合的な作品を志向すべきであると、私は考えるのである。絵画においても、このことは言えて、キャラクター』を初めにつくるのではなくて、まず、『ラウンドスケープ』をそれだけで作品と言えるものをつくる。そこに物語を構想して、さらにそれにあったキャラクターを造型するというように、制作して行く。

もう一つは音楽である。白濱雅也さんは10年近くも音楽を志向してバンド活動をやっていた。それを作品の中に入れるべきである。音楽をこの『ラウンドスケープ』に続いて制作し、その合体の中で、それから立体を考える様にする。つまり、白濱さんの初期にやろうとした事の内に、美術から回帰して行くのである。そうすると、総合的な作品が作り出すことが出来、凡庸さを脱することが出来るのではないだろうか。

初期にやろうとした事こそ、自分の本当の欲望である。この原点を満たさない限り、欲望は実現しないのである。

ラウンドスケープと音楽を作る事こそ、白濱さんの欲望ではなかったのか! その中に彫刻を構想するという手順で作品を展開する事こそが、自分の欲望の実現ではないのか!

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