複雑系の絵画理論

NHKスペシャル『新春ガチンコトーク』を見た。

途中からなので、

最後部分しか見られなかったのだが、

なかなかシリアスで、

今の時代の深刻さが良く出ていた。

その中で、教育の不平等性が語られていて、

貧乏人の家に生まれると、

教育の機会を手に入れられないという現実への危惧が強調されていた。

それはその通りであるけれども、

むかしからそうしたものであったのであって、

特に今日の問題ではない。

平安時代に貧乏人の家に生まれれば、

文字すら教えられずに、

文盲で生きて死んでいったのである。

そういうものなのである。

それに比べれば、今は義務教育は、

どれほど劣化していてもあって、

インタネットでもかなりの知識は入るし、

公立図書館では、かなりの本は読める。

学習をしようと思えば、何としても学び得るのであって、

その事実を見過ごすことは、

フェアではない。

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むしろ大学を出ながら、

碌な教育も受けていないし、そして自己学習も不徹底な人々の方が問題なのである。

絵画の問題もそうなのだが、

たとえばグリンバーグが、

絵画を４種類に分類している。

その分類を、見分ける事ができるような訓練はできていないと

おかしいのである。

つまり

・ペンキ絵

・だまし絵

・深いイリュジョンの絵画

・オプティカル・イリュージョンの絵画

この４つを、全人類の絵画史を見渡して、

分類する必要があるのである。

彦坂の分類だと、

・原始平面の絵画

・透視画面の絵画

の２種類に分類されてしまうが、

それはグリンバーグの分類をふまえた上で、

絵画構造から、それを整理してるからである。

つまり下のようになる。

・原始平面の絵画（・ペンキ絵　・だまし絵）

・透視画面の絵画（・深いイリュジョンの絵画・オプティカル・イリュージョンの絵画）

たとえば、エジプトのピラミッドの絵画は、

グリンバーグの４つの分類のどれに分けられるのだろうか？

もう一つ、写本を見てみよう。

１８世紀のアイルラドのものだが、

そのことはあまり意味が無くて、

この手の写本画はたくさんある。

King Gylfi gets himself beguiled. From the 18th century Icelandic manuscript 

この２種類の絵の構造が違うのです。

その見分けが、まず、基本なのですが、

たぶん、大変に難しくて、教えにくいのです。

エジプトの絵画は、

第１次元にあって、透視画面で、

グリンバーグ的にはオプティカル・イリュージョンの絵画です。

それに対して、

アイルランドの写本画は、第６次元にあって、

原始平面の絵画で、

グリンバーグ的には、ペンキ絵なのです。

正確には、彦坂は、そのように解釈して分類しているのです。

２枚を並べるいつもの手法が、

旅行先で、できません。

たぶん、多くの人は、

この２枚の差を見分けられないと思うのですが、

この透視画面と、原始平面の見分けができないと、

絵画論への入門ができないのです。

この違いを、ポロックと白髪一雄で見てみましょう。

下の図はポロックの中でも、

第１次元の作品ですが、

透視画面で、オプティカル・イリュージョンの絵画です。

さて、もう一つは、

白髪の作品で、これは第６次元の絵画で、

原始平面の、ペンキ絵です。

こうして、良く似た絵画でも、

実は、絵画構造に根本的な差があるのです。

似て非なるものということが、重要なのですが、

このことを教育するのは、

可能な事なのですが、

にもかかわらず、きわめて難しいのです。

簡単な見分けができるのに、

なぜに教えられないのか？

そうしたものなのです。

簡単な真理を、多くの人が拒絶します。

コメント 9

年末から新年へと書込みが猛烈に蓄積していて，
一休みしていたこちらはコメントどころではありませんでした．
直近のこの書込みは教育の限界をふまえながらも
　何とか理解の裾野を広げようとされているご様子，
　　それならと初歩的なコメントを書かせていただきます．

グリンバーグの抽象表現主義台頭期から発展，衰退への視点として
平面性への高い評価が一貫して有ったと受け取っていたのですが，
これは同時に近代以前の巨人の方法論が文化全体の大衆化の中で劣化し
　　いわばキッチュとして多数派を形成していったことへの
強い異論でもあったのでしょう．．

彦坂様の絵画評価のカテゴライズの大枠は簡潔にまとめると
原始平面の絵画（・ペンキ絵　・だまし絵）
透視画面の絵画（・深いイリュジョンの絵画・オプティカル・イリュージョンの絵画）
となっているのですが，ここで使用している”原始平面”という用語は，
２次元的絵画空間とは異なる別の概念のようにも思えます．
とすればなぜ”平面”というあえて誤解を承知の上での用語を採用されたのか，
それにはこだわらなくてはいけない論理が有るように思え
この辺の経緯にかんする文献など知りたくなりました．
時間が空いた時でも結構ですからお願いできたら幸いです．

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