イスラエルの政局 [歴史/状況論]
イスラエル総選挙 暗雲が漂う和平への道 | '09/2/13 |
停滞している中東和平が、さらに遠のいてしまうのか。イスラエルの総選挙で、パレスチナとの和平交渉に反対、あるいは消極的な右派政党が勢力を伸ばし、全百二十議席の過半数を占めた。 パレスチナ側からの攻撃が止まらないことで、イスラエル国民の間で不安感が強まっているようだ。しかし、和平なくして安全を長く確保することはできまい。国際社会は、双方への働きかけを粘り強く続ける必要がある。 「和平交渉は時期尚早」とする野党第一党の右派リクードは前回の倍以上の議席を得た。四割近く議席を増やし第三党になったのは「わが家イスラエル」。パレスチナのイスラム原理主義組織ハマス打倒を訴える極右政党である。 与党で中道のカディマは、大敗も予想されていたが、かろうじて第一党にとどまった。右傾化の行き過ぎを懸念する有権者も少なくなかったのだろう。もともとはリクードを離れた穏健な人たちが多く、パレスチナとの「二国家共存」を掲げる。その一方で、昨年末にはガザ侵攻に踏み切った。時には強硬な対応も辞さないという「選挙戦術」だったようだ。 カディマもリクードも単独では過半数に程遠い。政権を担うには他党との連立が不可欠だ。組閣に向けた駆け引きが始まっている。どちらの主導で、どんな枠組みの政権ができるか。和平の行方も左右しそうだ。 もしパレスチナの存在を認めないような強硬な政権ができれば、和平への道筋に暗雲が漂う。地域全体の緊張が一気に増す恐れもある。核開発の疑いのあるイランに対して、軍事行動を起こす可能性さえ指摘されている。 これまでイスラエルは、パレスチナ人や、その支持者を圧倒的な軍事力で押さえ付けてきた。しかし、それで国民の安全は確保されたのだろうか。新たな反発や、国際社会の批判を招くだけだったのではないか。パレスチナとの共存なくして、地域の平和も安定も、あり得ない。 フランスやエジプトなど関係国の努力もあって、ガザ侵攻は停戦にこぎ着けた。戦火の消えた現状から、さらに和平への道を進めるには、パレスチナに自制を求めることも要るだろう。その上で、双方が話し合いに加わるよう、どう説得するか、国際社会が知恵を出し合うことも欠かせない。 イスラエルと太いパイプを持つ米国の責任は特に重い。中東和平を重要課題とし、積極的な関与を表明しているオバマ政権。指導力を発揮できるか、早速、試練にさらされる。
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「イスラエルが追いつめられている」とのご指摘に深く納得しました。
ハマスの指導部の顔ぶれについて勉強してみたいと思います。
by 丈 (2009-02-15 11:13)