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高梨豊の写真と第6次元領域 [アート論]

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東京国立近代美術館で開かれている高梨豊の回顧展を見た。

高梨豊は、中平卓馬らとプロヴォーグをやっていたこともあって、
私の学生時代から、つまり1969年から見てきているが、
第6次元の写真で、私の興味の外にあった。

今回国立近代美術館で会場に入って、
最初に驚いたのは、観客が、ジーと凝視して鑑賞している事であって。

人を引きつける力があるのです。

改めて、言語判定法で芸術分析をしてみると、
6次元ではありますが、3界において真性の芸術性があります。
シリアスアートで、ハイアートです。
ですからとして、立派な完全な芸実写真であると言えます。

第6次元の芸術という問題を改めて、考えさせられる作品と
言えます。

第6次元の真性の芸術ではいけないのか?

第6次元というのは、自然領域ですので、
高梨豊は、自然領域の芸術家であると言えます。

おそらく、ここで欠けているのは、
この私たちが生きている文明の理不尽さと、
そしてこの日常の背後に広がる闇へのまなざしの欠如です。

上に掲載した写真でも、写っているビルの背後の見えない世界が写っていないのです。
見えるものの、背後に、見えない世界が広がっているのに、
そうしたものへのまなざしが無い。

しかし、それは普通に生きている人間の、
安心したいという、自明性の願望であると言えます。
それで何故に悪いのか?

悪くはないのです。
しかし退屈です。
世界には破綻もあるし、悲劇もある。
そして強烈な感動もある。

世界が崩れるとき、
それは今の金融危機のような状態で、
天下のフォードやGMが崩壊していくとき、
見えてくる崇高な次元が41次元なのです。
こういう多次元のふくらみが、高梨豊の写真にはない。

だがしかし、第6次元の芸術写真として、
完璧な質を有した作品だと思いました。

タグ:高梨豊
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symplexus

最近故あってジャック・ロンドンの短編「火を熾す」を読みました.
『白い牙』『野生の呼び声』の作者だということはある程度知られて
いるのしても,ジャーナリストとして”農業経済,アルコール依存症,
心理,調教,建築,暗殺,遊戯,財閥,生態学,経済学,民話,金探し,
貪欲,放浪,愛,精神沈滞,神話学,刑務所改革,政治的腐敗,拳闘,
人種差別,革命,科学,SF,航海,貧民窟,社会主義,畜産,戦争,
野生動物,文筆業”等広範なテーマに及んだということはあまり知られて
いないようです.しかも1876年生まれ,41歳の短い生涯でした.
そのロンドンが短編「火を熾す」の中で登場人物として据えたのは
古参の忠告を無視して厳冬のユーコン川沿いに採鉱地を目指す”冷静”
で”抜け目無い”世才に長けた男です.支配と服従以外決して認めない
一匹のエスキモー犬を従えての単独行でしたが,やがてー50度C以下の
想像を絶する寒気が彼等を悲劇的な結末へと追い込んで行きます.
本能によってこの寒気の恐怖を知る犬と,冷静な理性によって破滅を
乗り越えられると考える男との対比,それは極限でついに運命を分かつ
ことになるのですがここではそれには触れません.
 このブログ記事の内容とうまくかみ合うのかどうか分かりませんが,
『おそらく、ここで欠けているのは,この私たちが生きている文明の理不尽さと,
そしてこの日常の背後に広がる闇へのまなざしの欠如です』という処と
『男の問題点は,想像力を欠いていることだった.
人生の諸事を処する上では迅速であり抜かりなかったが,あくまでも
それは具体的な事柄に関してであって,それらの意味については頭が
働かない.・・・体温を有する,一定の暑さ寒さの狭い範囲のなかでしか
生きられぬ生き物としての自分のもろさ,あるいは人間一般のもろさ
に考えが至りはしなかったし,さらにそこから,不死であるとか,
宇宙における人間の位置であるとかいった観念の領域に思いを巡らす
こともなかった』(火を熾す,柴田訳,スイッチ・パブリシング,p10)
というロンドンの指摘に同じ位相を感じたからでした.
 社会の生存ということを考えると,平安な時に普通と自称する大多数
から余計な人間として疎まれた詩人とか芸術家とか哲学者とかが,
本当の危機に臨んで社会から渇望されるならば,そこに希望が在るのかも
しれません.

by symplexus (2009-02-27 13:48) 

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