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ジャパニーズ・ポップ(加筆1) [アート論]

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呉亜沙の絵画である。
一応《一流》の絵なのです。

《イメージ判定法》で《8流》。
《言語判定法》で《1流》。
《現実判定法》で《8流》。

しかも、真性の芸術です。

非実体性、非合法性、《退化性》はあるから、真性の芸術。

だが、反動的な前近代美術なのです。

固体美術(=前近代美術)

しかし《想像界》《象徴界》《現実界》の3界を持つ美術で、
その総合力は、評価で来ます。

にもかかわらずローアートです。
シリアスアーオではなくて、《気晴らしアート》。
偶像崇拝の美術です。
 
もう一つの革新性と、精神性の高さがないのです。

しかし、「純粋に美術を楽しむ」という事で言うと、
これで良いと言えます。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

『アートコレクター』という雑誌の最新号の特集が、
「ジャパニーズ・ポップ・ベスト30」である。

 この雑誌を見るのは2度目であって、私が定期購読をしているのではない。
今度は、自分の本の書評を小さく載せてくれた関係で、送られて来たからである。
 
見て行くと、記事そのものは、ストレートに信じられるものではない。
明らかに仕掛けがあって、誘導しているところがある。

特にそれは価格の部分にあって、作家によって掲載価格自体の基準が違う。
 
たとえば、村上、奈良については、海外オークションでの、最高落札価格を記載しているのに、
Mr(ミスター)、加藤愛については、価格表示がない。
 
うらうらら という作家については、立体作品の価格を提示している。
 
さらに、鎌谷徹太郎、木津文哉、西澤千晴といった、私の知らないアーティストの扱いは、
「購入の目安」という形ので作品価格で、
しかも記事が格段に大きい。

明らかにおかしいのである。

報道と言う水準ではなくて、企画もので、
しかも何らかの形での意図的な記事作成である。何をしているのかを断定は出来ないが、最悪の事を考えれば、掲載料を取っているのかもしれないのであって、そういう疑いを持たせる誌面作りである。

経済的には、掲載料をとる取ると言う出版社の気持ちは理解できるが、
誌面をつかった広告でしかない記事を本文とまぜて記事作りをする手法は、
モラル的には、退廃以外のなにものもないのである。
こうした記事の制作は、現代美術系の雑誌にもあったし、
建築雑誌にも見られるものである。

しかし
面白い雑誌というのは、
そういう退廃を拒絶した所に
生まれるのである。

 こういう疑いを抱かせる記事だから、この雑誌の記事を基準に「ジャパニーズ・ポップ・ベスト30」を鵜呑みにはできない。
ベスト30が、いかなる基準で作家が選ばれているのか自体が、
信用できないのである。
 
「誌上頒布」といった頁もあって、こうした美術雑誌とか、美術年鑑というものの商売は、業界癒着性が強くて、
ジャーナリズムとしての自立性に疑問を抱かせる。
団体展や、大手画商と結びついている業界誌である。
こうしたことは昔からの伝統なのである。
そこには、もちろん、まともな批評精神がない。
こういう雑誌で連載を書く執筆者も信用できないのである。
 
だからといって、私自身が、オークションのデーターを集めて、詳細に現在の美術市場を分析し、
そして本当に「ジャパニーズ・ポップ」といった表現のエコールが確立されたのかどうかを調査する意欲も無い。
それだけの芸術的な魅力のある作家が、複数いるのではないからである。
簡単に言って、あくまでも村上隆・奈良美智の2人と、その波及に過ぎないのである。
波及は波及であって、それ以上のものには、なっていない。
芸術上の意味は低いのである。

私がイメージするのは、ウイーン幻想派との連想である。
ちょっと日本語になっていないが、
ウイーン幻想派というのも、売り絵でしかなくて、
芸術的には《6流》のペンキ絵であった。
同様に村上隆を頂点とする「ジャパニーズ・ポップ」は、
《13流》のデザイン的エンターテイメント美術であって、
芸術運動ではない。

価格の上昇や社会性はともかくとしても、美術史としての意味も、すでに終わっている。

終わった所から見ると、特に奈良美智というのは、何であったのだろうか?
この評価は、むずかしい。
 
30人の作家を、荒くチェックすると、
ほとんどは合法的で、実体的であって、デザイン的エンターテイメントに過ぎない。
どれほど高価になっても、デザインに過ぎないものは、
芸術的な意味は無いのである。
それは売り絵に過ぎない。

その中で奈良美智は、確かに《非合法性》はあるから、不完全ながらも芸術性はあったのだが、
しかし《退化性》性はないから、真性の芸術ではなかった。
 
奈良の波及の中でも例外はあるのだが、たとえば呉亜沙は《1流》で、《退化性》性もある。
だから真性の芸術である。
このことは、評価できるのである。

だから無条件に素晴らしいと言えるのか? 

しかしである。ローアートで、明らかに奈良美智の模倣性を抱えている。
奈良が液体美術(近代美術)
であったのに対して、固体美術であって、
つまり奈良美智的なものを前近代に押し戻した反動美術に過ぎない。
つまり南画の伝統への回帰である。女性版の小川 芋銭である。

逆に言うと、奈良美智は、
小川芋銭的な南画の近代化であったのかもしれない?

小川 芋銭【1868年慶応4年) - 1938年昭和13年) 
明治から昭和初期にかけて活躍した日本画

川端龍子らと珊瑚会を結成。横山大観に認められ、日本美術院同人となる。

生涯のほとんどを茨城県の牛久沼のほとりで農業を営みながら暮らした。

画号の『芋銭』は、『自分の絵がを買う銭(金)になれば』という思いによるという


身近な働く農民の姿等を描き新聞等に発表したが、
これは社会主義者の幸徳秋水の影響があった。
また、水辺の生き物や魑魅魍魎への関心も高く、
特に河童を多く残したことから『河童の芋銭』として知られている。

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小川芋銭の顔である。
《イメージ判定法》で《8流》。
《言語判定法》《8流》。
《現実判定法》で《1流》。

《想像界》《象徴界》《現実界》の3界を持つ人格者。

固体の人。明治の近代化に乗れなかった人である。
こうした、取り残された時代の不適応者に、
意味が無い訳ではない。
そこに、芸術は、確かに立ち現れるのである。

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芋銭は、《言語判定法》で、《1流》。
《象徴界》の絵画であって、
《退化性》性のある、真性の芸術作品である。
きれいだと、思う。

ただし固体美術(前近代美術)である。
だから日本画の近代化に参加したというものではなくて、
その反動形成であった。

芋銭は、その反動の美術の正統性を持っている。
カッパを主題にし得た正当性は、私も高く評価する。

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現代の女性画家・呉亜沙に群がる人たちは、
小川芋銭的南画の前近代的保守化した感覚にもどる呉の、
安全さに飛びついているのではないか?

呉の《1流》の真性の芸術絵画にあるこうした保守性を、私は評価しないのである。

文化が、いくら循環系に入ったからと言って、こうした回帰の良さに満足する事を、私は選び得ない。

コレクター雑誌は、こうした固体美術への回帰性に満ちている。
骨董趣味こそが、芸術であるという錯誤である。
この錯誤が、完全に間違いとは言えないのだが、
しかし創造性を、決定的に欠く事になる。
このことに、私は同意が出来ない。

しかし、「純粋に美術を楽しむ」
人々にとって、芸術とは固体美術という骨董的追憶性なのかもしれない。
フロイトの言う《退化性》というものが、
作家の個人性の始元への系譜性であるとすると、
観客が見る骨董的追憶性というものも、
私の嫌悪感とは別に、
文化的な退化性として、正当性があるのではないか?

こうしたコレクター雑誌を見る時に、いつも感じる汚さと、暗澹たる気持ちというのは、
金に群がる、様々な思惑と、詐欺を思わせる仕掛けと、
誘導のありようが不透明なドス赤い《21流》の世界を出現させているからである。
そして骨董的固体趣味!
世俗という現実のこうした汚濁の世界を避けて通る事は出来ないのだが、
しかし、盲目的に巻き込まれる事は、私の眼の生き方ではない。
絶え間なき反省と理論的整理と
方法化だけが、
私には重要である

改めて思う事は、こうした雑誌は駄目なのである。
 
最後にこの雑誌『アートコレクター』の格付けである。

《イメージ判定法》で《8流》。
《言語判定法》で、《21流》。
《言語判定法》で、《8流》
 
合法的で、実体的で、デザイン的エンターテイメントである。



 

 


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コメント 2

満腹

面白すぎる。
確かにある種、作為があるものが多いと思います。
美術雑誌等を見ていて感じる違和感が納得できた。


相変わらずの、情報量と読み応えがあるボリューム、恐れ入ります。

これを毎日、書いているというのもすごい、と思います。

下書きなどはされているのでしょうか?

by 満腹 (2008-06-19 12:27) 

ヒコ

いや、短く書こうとしているのですが、自分の問題にぶつかると、自然に探求的になってしまいます。下書きは書いていません。まったくの自動記述です。
by ヒコ (2008-06-19 13:58) 

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