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金融危機後の新時代が来る(加筆3) [歴史/状況論]

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金融危機後の新時代が来る」というのは、
今出ている『ニューズウイーク』(2008/10/05)の記事の題名です。

資本主義 金融危機後の新時代が来る

世界の金融界を支配してきた
アングロサクソン型モデルが崩壊
繁栄を持続できる新たな経済秩序とは

実体経済とかけ離れ、リスクの高い取引の横行を許した金融ビジネスモデルは崩壊した。市場万能主義に基づく自由化の流れは止まり、グローバルな規制強化の時代が始まろうとしている。

 文字どおりドラマのような1週間だった。米連邦議会は最大7000億ドル規模の金融安定化法案を議論し、投票にかけ、修正し、最終的には10月3日に成立させた。
 法案を下院が一度否決した9月29日には、ダウ平均株価が過去20年で最大の下げ幅を記録。その後、世界の株式市場はまるでジェットコースターのように乱高下を繰り返した。銀行間取引金利は過去最高になった。誰が危ない資産を保有しているのかわからず、金融機関は疑心暗鬼に陥ったからだ。


今回の金融危機によって、
時代は仕切られ、
新しい時代が始まります。

これは美術も同様です。
美術の新しい時代が始まります。

数日前に、ある日本のオークション会社の、次のオークションのカタログ2冊を見ましたが、表紙を開けて最初に感じた事は、古さでありました。昔の時代の作品を見ているような感覚がしたのです。日野之彦やロッカクアヤコが、一つ前の終わった時代の陰りに覆われていたのです。
オークションの結果が出て行けば、はっきりしますが、今までの異常な高値の投機買いの時代は終わったのです。

日本のオークション会社は乱立して10数社はあるはずですが、いくつかのオークション会社の倒産が始まります。

時代は仕切られたのです。

正確には、株価が底を打つ必要があります。
それがいつになるかは、
分かりませんが、
アメリカの大統領選挙がらみで、
次期アメリカ合衆国大統領および次期アメリカ合衆国副大統領を選出するための選挙は、2008年11月4日に実施される予定です。そして2009年1月20日に正式にアメリカ合衆国大統領および副大統領が就任します。
おそらく、私の評価しないオバマが、
アメリカ大統領になる前後で、
様子がはっきりするでしょう。

オバマは、演説は巧いですが、演説は演説に過ぎません。そして彼は経済が強いわけではありません。アフガニスタンから撤退する意思もありません。むしろ戦争の時代へと向かうだろうというのが、歴史は繰り返すという過去の教訓からは、言えます。

1929年の世界大恐慌は第2次世界大戦へと向かう形でしか解決されなかったのです。

私はオバマへの批判的な視点を書いたブログを、撤回する気はありません。オバマになっても、アメリカの下降は、加速するだけです。

美術の価格は、株価とほぼ連動して動いて行くものです。

1929年の世界大恐慌の時も、
株と一緒に、美術作品の価格も下落しています。
その底の後、価格は緩やかに回復して行きます。
第2次世界大戦の戦争があるのですが、
その間も価格は回復して行きます。
この回復期に、回復した作家と、回復しなかった作家が、
出て来たのです。

回復したのが、マチスやピカソなどの、
モダンアートの作家たちであり、
アカデミーの古い作家たちは回復しなかったのです。
こうして美術史は区切られたのです。

同じ様なことが、
今回も起きるかもしれません。

1929年の世界大恐慌と、今回の違いを指摘する論者もいますが、違いは明らかですが、しかし土砂崩れが起きた事には代わりはありません。基本的な手当をして行く事は重要ですが、だからと言って起きた土砂崩れを途中で止める事はできません。土砂崩れで分かりにくければ、山火事と言ってもいいですが、巨大な山火事を消す事はできません。手当てする事は延焼を少しでもくい止める為のささやかな対処しかありません。燃えるものは燃えるしか無いのです。そうしたものなのです。

どのような淘汰がされるにしろ、
時代は変わって行きます。

この20〜30年の、
ハイリスク、ハイリターンの金融証券の動きに連動して、
若いアーティストの高価格化が起きていたのであって、
そういう投機性は、今、急速にしぼんで、
金を買う様な、リスクの少ない、
手堅いものに、投資対象が変わって来ています。

美術も同様で、
若いリスクの高いアーティストへの投機は、
終わるでありましょう。

この見直しの動きが、
ダミアンハーストや、村上隆の作品評価の変動にまでなるのか?
ゼロで行くはずはありません。
ダミアン・ハーストや村上隆/奈良美智の時代が終わったのだと、
思います。

草間弥生の作品は、
すでに最高値の1/4くらいまで落ちて来ているようです。
今回のオークションにも、大量の草間がでますが、結果は良く無いだろうと、まあ、私の素人の予想に意味はありませんが、草間の時代も、終わるのではないか。

かと言って、草間や、ダミアン・ハーストや村上隆がゼロになるわけではありません。勢いが消えるのです。

見直しが、この20年〜30年間の作家に及んでいくのか、
否か、見て行きたいと思います。

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コメント 10

TOSIZO

すでに、去る4日初めて香港で行なわれたサザビーズ・コンテンポラリーで、中国作家が大体半値、村上の目玉作品は不落。奈良さんも2点のうち1点は不落。もう1点も最盛期の半値くらいでした。

マーケットは調整に入っていますが、ロッカクさんなどはいまだ強いです。

というのももともと安いからで、ニューアートのすべてが底割れするのではなく、調整の時代がしばらく続くのではないでしょうか。
by TOSIZO (2008-10-09 13:05) 

ヒコ

TOSIZO様
コメントありがとうございます。香港サザビーズのカタログは見ていますが、結果は知りませんでした。
ロッカクアヤコについては、人からの伝聞ですが、韓国のオークションで100号800万円迄行ってピークとなり、その後の、同じく韓国のオークションで180万円まで落ちたと聞いています。彼女の作品はデザイン的エンターテイメントでしかないので、飽きられる時期が木ますので、それまでは持つでしょう。評価はヨーロッパなので、ヨーロッパの評価の変化が出れば、もっと落ちるだろうと思います。
ニューアートすべてが崩れる事はないですね。少なくとも20%崩れるだけかもしれないし、多くても80%の下落で、20%が残るかもしれません。
 とにかく一度売買のマーケットに乗ると、基本的にはゼロにはなりません。しかし作家自身が、時代の変化を乗り切れなくてつぶれれば、事実上消えます。日本の工作少女の大半が、消えている現実を思い出す必要があります。
 そして1980年代のニューウエイブ・ペインティングのほとんどが底割れした事を思い出す必要があります。イタリアのトランス・アヴンギャルドというのは、何であったのでしょうか?
 日本では明確ではありませんが、私見ではシュナーベルも、キーファーも終わってしまっているし、最盛期も《6流》の駄作でしかありませんでした。過去の底割れの事象を再検証して考えないと、単なる希望的観測に過ぎず、歴史の怖さを見過ごす事になります。
 
by ヒコ (2008-10-09 17:27) 

TOSIZO

ヒコ様、ご高説、いたみいります。
ロッカクに関してですが、韓国の800万は一度だけなので完全にフロックと見ます。
あの絵であのキャリアが100万台であること自体が高いです。
現在F50を越えると100万しています。
まだ強いといえるのではないでしょうか。
まあ、マーケットの価格ですからどう動くかは誰にも分かりませんけど。
by TOSIZO (2008-10-10 00:17) 

ヒコ

 おっしゃるとおりでしょうね。私自身は、オークションのウオッチャーではないので、直に電話やネットで詳細に情報をとっているわけではないので、あくまでも専門家の話を聞いて、反応しているレベルです。
 ロッカクアヤコの作品自身は、私の格付けでは《6流》です。歴史上社会的に成功しているのは《6流》の作品だけですから、その意味でも、おっしゃる様に、ロッカクは市場的には強いです。
 しかし完全なデザイン的エンターテイメントであって、芸術性はゼロですので、かならず失速するものです。強い期間は実質5年、正味3年のはずだと、私は思います。
by ヒコ (2008-10-10 08:36) 

yutakarlson

こんにちは。当面の信用不安を克服するため、各国が資本注入することは避けられないことだと思います。しかし、その後どうするかで、実体経済の回復が決まってきます。
私は、現在多くの人々の頭の中は「経済」というキーワードでいっぱいになっていると思います。そうして、八方塞になっていると思います。私たちは、ここで「社会」に着目する必要があると思います。今後健全な社会を形成しなければ、実体経済も良くはなりません。といようより、現在全く異質な社会に入りつつある先進国においては、「次の社会」に備える国だけが、来るべき将来において、健全な社会と経済を手にするということです。逆に、「次の社会」に備えない国とっては、不健全な社会と経済で没落していきます。詳細は是非私のブログをご覧になってください。
by yutakarlson (2008-10-11 10:34) 

丈

yutakarisonさんのブログ拝見しました。
大変興味深い内容ですね。また2003年のNHKスペシャルの動画「アメリカの消費がおかしい」も参考になりました。
社会を変えるということは「対症療法」でなく「骨の髄から」変わる事ですね。社会自体から自発的に変わる事は不可能だと思いますが、

(個人的な事ですが私は慢性骨髄性白血病で、師匠には「死ぬ気で断食すれば治る」と言われたのですが、それが出来なくて、薬に頼らざるを得ない状況です。多分この社会も同じかなと。)

幸か不幸か大規模な気候変動、自然環境の崩壊も予測されていますので、それに伴う社会の激変はあるかもしれませんね。
by (2008-10-11 22:42) 

ヒコ

yutakarisonさん、丈さん書き込みありがとうございます。
ブログは拝見しました。基本的に同感です。
 丈さんの認識は、理解はできますが、今起きている経済恐慌そのものの、直接的な原因は、気候変動ではありません。
 あくまでも、新しい情報化社会の成立とそれにともなう新自由主義の展開の結果であって、それ以上ではありません。自然環境の悪化による社会変動も同時には重なって来ますが、一応分離して理解できる変動なのです。
by ヒコ (2008-10-11 23:25) 

鷹一

ロッカクさんの絵は内容のないものをギャラリーの介入で商品価値をつけているだけに思えますが?
以下、サザビーズ記事の引用ですが、ナラの絵は予想価格を超えての落札みたいです。
大きな紙にアクリルというタイプみたいです。

サザビーズ不調? 香港オークションふるわず-

村上隆の『フラワー・マタンゴ』が目玉作品として評判だった。高さ4メートル、幅3メートルある巨大な彫刻作品はカタログの表紙にもなり、 300万ドル(約3億2000万円)と予想されていたが、残念ながら不落札となった模様。ちなみに直後のロット、奈良美智のペインティングはエスティメートを大幅に上回って落札されていた。

現代アートの目玉の「モダンアンドコンテンポラリーアジアンアート」のイブニングセールは、出品作品の4割が不落札。

さらに「20世紀の中国アート」のオークションも3分の2が不落札という結果。

ここでの最高落札額は張曉剛(ジャン・シャオガン)の作品で2千306万香港ドルだったが、それでもエスティメートの範囲内に納まった。

http://www.tokyoartcross.com/news/2008/10/1045.php


by 鷹一 (2008-10-12 02:54) 

TOSIZO

鷹一さま
奈良の落ちた方のものは、エスティメート自体が安めで、
それを上回ったといっても2年くらい前の半値です。
奈良作品のピークは2007年だったような気がします。
NYが中心の頃で、そもそもアジアに回ってきてから伸びません。
by TOSIZO (2008-10-13 12:10) 

ヒコ

鷹一さん、TOSIZOさん、
ウオッチャーとしてのコメントありがとうございます。
美術や美術家の経済や芸術的価値というのは、オークションだけで決定できるものではないのです。そして自由市場そのものの見直しが進むと、美術市場の中でのオークションやプライマリーギャラリーの位置も含めて、変動して行くでしょう。
それにしても、ダミアン・ハーストは、ものの見事に世界大恐慌の直前に売り抜けているわけで、見事な手腕だと思います。
by ヒコ (2008-10-14 23:41) 

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